財布の中の1万円札を、見てみてください。
これ、ただの紙です。
食べられません。
着られません。
雨もしのげません。
なのに私たちは、この紙のために毎日働きます。
失うのを恐れます。
増やしたいと願います。
不思議だと思いませんか?
今日は「お金って、そもそも何なのか」を考えます。
1お金がない世界を想像してみる
お金の正体を知る、いちばん簡単な方法があります。
「お金がない世界」を、想像してみることです。
あなたは漁師です。
今日、魚が10匹釣れました。
夜ごはんは、米が食べたい。
米農家さんを探して、こう言います。
あなたこの魚10匹と、お米を交換してくれませんか?
米農家さん魚はいらないよ。今ほしいのは長靴なんだ。
困りました。
今度は「魚がほしくて、長靴を持っている人」を探さなければいけません。
これが物々交換の弱点です。
相手のほしいものと、自分の持っているものが、ぴったり合わないと取引できないのです。
しかも魚は、明日には腐ってしまいます。
この不便を解決するために生まれたのが、お金です。
魚をいったんお金に換えておけば——
いつでも、誰からでも、米でも長靴でも手に入ります。
お金は、「すれ違い」と「腐る問題」を一気に解決した、大発明だったのです。
2お金の3つの働き
今の話の中に、お金の役割はほぼ全部入っています。
整理すると、お金には3つの働きがあります。
- ① 交換の道具
魚と米を直接交換しなくても、お金を挟めば誰とでも取引できる - ② 価値のものさし
「魚1匹=お米どのくらい?」と悩まなくても、円という単位で価値がわかる - ③ 価値の保存
魚は腐るけど、お金にしておけば明日も使える
実はこれ、コンビニでおにぎりを買う瞬間にも、全部働いています。
働いた分がお金に換わり(①)
おにぎりに150円という値段がつき(②)
先月のお給料が今日も使える(③)
実は③の「価値の保存」だけ、完璧ではありません。
お金の価値は、時間がたつと変わることがあるんです。
これは次回のテーマ「インフレ」につながります。
今は「③には弱点があるらしい」とだけ覚えておいてください。
31万円札の正体は「信用」
ではなぜ、ただの紙にそんな力があるのでしょうか。
1万円札は、紙そのものの値段でいえば、わずかな価値しかありません。
それでも1万円分の買い物ができるのは——
「この紙は1万円の価値がある」と、みんなが信じているからです。
お店があなたの1万円札を受け取るのも、理由は同じです。
「これはまた別の人に使える」と、お店も信じているのです。
その信じる連鎖の大元には、日本という国と、日本銀行への信用があります。
つまりお金の正体は、紙でも金属でもありません。
信用そのものなのです。
これは裏を返すと、こういうことでもあります。
信用が揺らげば、お金の価値も揺らぐ。
実際に歴史の中では、戦争や財政破綻で自国のお金への信用が崩れ、お札が紙切れ同然になった国もありました。
「円だから絶対に安全」ではなく、「円は今、世界から信用されているから使える」——
この距離感を持てることが、金融リテラシーの第一歩です。
4お金は「目的」ではなく「道具」
ここまでをまとめると、お金とはこういうものです。
「信用を形にした、交換のための道具」
道具である以上、お金そのものが目的になることはありません。
ドライバーを集めることが目的の人はいませんよね。
お金も同じで、「何に使うか」があって初めて意味を持ちます。
では、お金という道具は何のためにあるのか。
人生の選択肢を増やすため——私はそう考えています。
お金があれば、嫌な仕事を断るという選択肢が生まれます。
家族が病気になったとき、治療を選べます。
学びたいことを学べます。
誰かが困っていたら、助ける側に回れます。
稼ぐ。守る。増やす。使う。誰かを守る。
このプロジェクトが「金融リテラシー=人として」を掲げているのは、お金の力がそのまま、人として生きる力だからです。
- お金は物々交換の不便を解決した発明。働きは「交換」「ものさし」「保存」の3つ
- お金の正体は紙ではなく「信用」。信用が揺らげば価値も揺らぐ
- お金は目的ではなく、人生の選択肢を増やすための道具
次回予告:第2回は「資産と負債の違い」です。
同じ「持ち物」なのに、お金を増やしてくれるものと、静かに奪っていくものがあります。
マイホームは資産か、負債か——ちょっと意外な答えから始めます。